アレルギー検査。

猫を飼おう、という話が具体的になったのは、ゴールデンウィークを目の前にして3度目の緊急事態宣言が発令された辺りのことだ。

「いずれ猫を飼う」ことに関しては結婚についての諸々を進める段階で既に前提としてあって、賃貸はペット可が必須条件だった為にいい物件に巡り会うまでなかなか難航した。

結婚記念日は祝日がいいね、というところからなんとなく文化の日に入籍する方向で準備を進めつつ、並行して賃貸の内見、ようやく部屋が決まれば引越しの準備。さらに並行して結婚式の準備もやっていた。

そんなバタバタした秋が過ぎ去ってようやく新生活が始まり、多少の衝突はあれどなんとなく二人の暮らし方が安定してきた頃。結婚から半年が経とうとしていた。

猫に関しては主に妻の希望で、それまではYouTubeで猫動画を眺めることが日課、程度の熱だったので実際にはこのまま猫を迎えることなく日々を送っていくかもな、と思っていのだが、コロナウイルスの収束が見えないまま一年が経ち、もともと大好きな海外旅行にまた行けるようになるまでまだ当分かかりそうだ、という見立てが彼女を動かしたのかもしれない。

とにかくある日急にスイッチが入ったように、妻はブリーダーのwebサイトから自分好みの子猫を見つけ出し、近いうちに会いに行こうと言い出した。

YouTubeの猫動画も具体的に猫を飼うためのノウハウを知る内容を選ぶようになる。

ブリーダーの住所までは車で90分程。緊急事態宣言中だったが、2021年の夏もインドアを強いられることは目に見えており、猫を迎え入れることが家庭円満に繋がるのであればと、余計な寄り道をしないことを決めて外出。

 

私は元々そんなに猫にもてた経験がなく、猫カフェに行ってもおやつを与えるときだけ寄ってくるようなつれない猫としか出会ったことがなかった。

そのブリーダーと暮らしている猫たちは最初こそ警戒していたものの、30分もしないうちにこちらの存在に慣れ始め、身体を触ることを許してくれたり、積極的に遊んで欲しそうにしてくるのだった。

正直なところ、今まで猫と遊んだ経験の中で一番楽しかった日だと言える。

目当ての子猫に至っては手に絡みつき、甘噛みをし、よちよちと膝を登ってきてあぐらの中心に収まる始末だ。天使がいる。

この子猫と暮らしてみたい!そう妻に伝え、二人ともハイテンションで前契約を済ませ、ブリーダー宅を後にした。

子猫は生まれてまだ1ヶ月を過ぎた辺りで、引き取れるのは月末になってから。

それまではブリーダー宅で面倒を見ててもらいつつ、毎日の成長を動画で送ってくれるとのこと。

昼食を取ろうと車を走らせている最中、早速第一弾が送られてきた。

子猫が生まれた時の動画だった。

 

手の痒みと赤みに気がついたのは昼食をオーダーして待っている間のことだ。

アレルギーの可能性が頭をよぎる。

妻に伝えると、みるみる気持ちが下がっていく。声が低くなる。

アレルギー検査の必要については前々から妻から言われていたが、実家で犬を飼っていたし、これまで猫と接した際にも症状が出たことがなかったため、軽視していた。

だが、猫に手を甘噛みされたのは今回が初めてではなかっただろうか。

仮に猫アレルギーでも猫を飼っている人は大勢いる、自分は手が痒くなる程度だから飼えないほどではない、とその場でネットの事例を検索しつつ主張したが妻の機嫌は直らない。

一先ず程度を知るため、直近でアレルギー検査を受けにいくことになった。

 

自宅近辺でアレルギー検査を受けられる病院を探し、月曜を待って早々に採血をしてきた。それがついさっきのことだ。

結果を聞きにいくのは来週の火曜。

自覚症状があるのでアレルギーがあることは間違いない。

手の赤みと痒みだけだったが、ブリーダー宅では終始マスクをしていたため、マスクなしで猫と暮らした場合に更に症状が加わるかどうかはわからない。

アレルギーに関してはかなり個人差があるようで、猫と暮らす中で症状が緩和された人もいれば重症化した人もいる。自分がどうなるかはわからない。

元々症状がなかったのにある日飼い猫に対してアレルギー症状が出た、というケースもあるので気にするだけ無駄な気もする。

結局はそれでも猫と暮らしたいかどうかではないだろうか。

それについては既に答えは出ているのだが、やれやれ。